ブックタイトル御料車の保存と修復及び活用

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概要

御料車の保存と修復及び活用

ら壁面、椅子や家具類と上から下に向かって埃を除去し、最後に絨毯に掃除機をかけた。カーテンなど刷毛で汚れを除去しにくい場合は超繊維ワイパーで乾拭きした(写真3、4)。綴織や刺繍などの装飾的な調度品には金糸や箔などが用いられているため、ブラッシングすることで何らかの影響がある場合は超繊維ワイパーで表面を抑える程度に汚れを除去するにとどめた。室内には空気清浄機2台を設置し、フィルターは2時間毎に交換した。さらに排気ダクトで室内の空気を外へ排出しながら作業を行った。食堂車の椅子には緑色の布カバーがかけられていたが、カビが確認されたため、エタノールを柔らかい綿布にしみこませて軽く押さえるように殺菌し、かつカビをクリーニングした(写真5)。座面の左がクリーニング後、右がクリーニング前で、紫外線ランプを照射すると右の座面にはカビの蛍光がみられた(写真6、7)。3.染織調度品のカバーリング破損の状況1号御料車は絹のサテンに、綿を詰めた壁面と同素材の椅子9脚、2号御料車は赤絹のベルベットに馬の毛を詰めた壁面と同素材の長椅子2脚(固定)、7号御料車は桃色の菊文様錦の椅子6脚あったが、座面の布が破れていた。破損の要因は使用による座面の摩耗、経年劣化による繊維強度の低下と、詰め物や椅子のスプリングによる布への負荷が考えられる。1号御料車は19世紀後半にヨーロッパで流行した様式で、クッション状に綿を詰めて絹布をたたんでボタンで留めた装飾が施されていた。椅子の座面のスプリングが絹布を押し上げて破り、中綿がはみ出していた。中の構造を見ると絹地の下には綿布が1枚敷かれ、その下に真綿が、さらにその下に木綿か麻布があり、その中には馬の毛のような詰め物が入っていた。真綿はヨーロッパではクッション材としてはあ写真3 2号御料車写真4カーテンを超繊維クロスでクリーニング82