ブックタイトル御料車の保存と修復及び活用

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概要

御料車の保存と修復及び活用

御料車の染織調度品の保存処置石井美恵東京文化財研究所文化遺産国際協力センター客員研究員1.はじめに平成18(2006)年10、11月に7、9、10、12号御料車を東日本旅客鉄道株式会社東京総合車両センター(品川区)から、1号御料車(重要文化財)と2号御料車を旧交通博物館(千代田区)から埼玉県に建設された鉄道博物館へ移設するために保存処置を行った(写真1)。御料車の車内は共通に、床には絨毯が敷かれ、布張りの椅子類には錦や綴織のクッションが配され、壁面や天井は錦、刺繍、綴織で装飾されていた。処置の内容は染織調度品のクリーニング、家具のカバーリングおよび移設のための化繊不繊布による養生と、移設後の養生の除去、再度のクリーニングおよび展示のためのカバーリングの留め直しであった。御料車のクリーニングおよび移設は日本では前例のないもので、どのような方針のもとでいかなる処置が必要であるかについて、御料車の事前調査を行い、海外の王室専用列車の保存修復事例を収集し、実際にイギリスのヨーク市にある国立鉄道博物館を見学して検討した。イギ写真1 1号御料車保存処置後80