ブックタイトル御料車の保存と修復及び活用

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概要

御料車の保存と修復及び活用

ス、パラロイドB72を選択して手板を作成した(写真47)。その結果、セルロースパウダーこくとパラロイドB72、松木粉に麦漆を混入した刻そ苧を併用することとした。色調整手板では7種きんけしふん類の金消粉と色合いを比較し、膠彩色、漆による練描き、平蒔絵技法を比較した(写真48)。まきはなその結果、金消粉の蒔放しを漆固めする方法を選択した。(4)素地と下地の強化素地と下地を強化するとともに、充填材の吸い込み止めを図る為にパラロイドB72 10 %キシレン4:トルエン1を亀裂や割れた木地の断面に含浸した(写真49)。また、亀裂部分を強化するためパラロイドB72 20 %キシレン4:トルエン1を再度含浸した。(5)割れ部分の充填割れ部分の充填は厚みの表面2分の1程度とした。充填にはセルロースパウダーとパラロイドB72 35 %キシレンを混合した材料を使用し、2回に分けて充填を行った(写真50)。割れ部分周囲の金蒔絵にパラロイドB72 20 %キシレン4:トルエン1を筆で塗り、養生した。充填材が乾燥するのを待って、上から刻苧(小麦粉+生漆+木粉)を薄く付け(写真51)、下地(砥粉+水+生漆)で表面を整え、最後に養生をキシレンで取り去った。(6)割れや亀裂部分の色調整復元箇所を透漆で筆描きし、金消粉(3号色)を蒔いて乾燥させた(写真52)。次に、金色の色調整をするため、透漆と黒漆を調合した漆をテレピンで希釈して金消粉に含ませた。(7)修理後の写真撮影および報告書の作成修理前と同じカットの写真撮影を行い、報告書を作成した(写真53 ? 56)。写真49パラロイドB72を使用した割れ断面の補強写真51刻苧による表面処理写真50パラロイドB72とセルロースパウダーの充填写真52充填部分の色調整78