ブックタイトル御料車の保存と修復及び活用

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概要

御料車の保存と修復及び活用

ている。大正4(1915)年に野村一郎設計の建築は平成10(1998)年には国定史跡に指定された(注5)。菊紋Medalは所蔵番号AH-1229-1、AH-1229-2ともに46 mm厚の針葉樹を用い、表面ろくろと裏側を轆轤で円形に荒引きした後、16弁の八重菊を刃物で彫刻したものと考えられる。木6-2菊紋Medalの品質形状および法量木製漆塗、金平蒔絵。形状は皇室の紋である十六八重表菊の菊花紋のレリーフとする(写真45)。菊花紋裏側にブロンズ製金具を木ネジで付ける。菊家紋と金具の接合部に外周に紅緋色のフェルトを貼る。ブロンズ製金具は上部になる位置に「上甲」(AH-1229-1)「上乙」(AH-地の上に漆固め、和紙を漆で貼り、その上から赤砥粉による漆下地と黒漆塗りで表面を整える。蒔絵には弁柄と漆を練り合わせた絵漆を使って金粉を蒔き、全体に磨いて仕上げる。法量菊紋(AH-1229-2)縦403横402.5厚46(mm)1229-2)の文字を刻み、ブロンズ製金具には中ブロンズ金具直径369厚4.5(mm)央に円形の穴、三方に御料車との接合部が認められる。御料車に取り付ける際は御料車外板に取り付けられた金具をブロンズ製金具の穴に差し込み、菊紋Medalを回転させる。穴は短冊ネジ外箱マイナス皿子ネジ頭径10、7.5 mmの2種縦580横505厚106(mm)形で回転する方向に幅5 mm狭くなることから、菊紋Medalを仮に固定できるように設計されたものと考えられる(写真46)。側面下方2箇所に直径11 ? 12 mmの穴を設け、内部に金具が取り付けてあることから、ボルトを使って菊紋を固定したものではないかと推定できる。菊紋Medalには専用の外箱が付属する。外箱は檜製柾目材で、菊紋Medalの外周と裏側のブロンズ金具の形状に合わせて完全に固定する形式をとる。外箱の内側には菊紋Medalを保護するために濃紺色のヴェルヴェットを貼る。6-3菊紋Medalの損傷状態菊紋のレリーフは一木の檜の柾目材を用いて成形されたものと考えられ、木地の収縮が原因で所蔵番号AH-1229-2の中央が完全に割れていた。木地は乾燥するに従い収縮するが、裏側に木ネジで固定されたブロンズ金具が動かないために木地にストレスがかかったものと考えられる。また、所蔵番号AH-1229-1ともに木地の木口付近に数か所の亀裂が認められた。制作時の和紙貼りや漆下地の強度が十分であったと考えられ、下地の剥離は認められなかった。そ写真45台湾国立博物館所蔵「菊紋Medal」保存修理前写真46菊紋Medal裏面のフロンズ製金具76