ブックタイトル御料車の保存と修復及び活用

ページ
75/106

このページは 御料車の保存と修復及び活用 の電子ブックに掲載されている75ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

御料車の保存と修復及び活用

写真35仕切の損傷保存処置前(8号御料車部材)写真37クランプによる仕切の綴織と背面板の固定保存処置中写真36仕切背面板の損傷保存処置前(8号御料車部材)写真38新補材による仕切背面板の固定保存処置後た時点で損傷が著しく進行していたものと考えられた(写真36)。また、綴織の下張りの和紙が劣化して粉のように崩れており、飾金具にも緑青錆が認められた。4-2-3仕切と引戸の保存処置仕切の保存状態が著しく悪いため、解体修理を行うのが望ましいと考えられた。しかし、時間と費用がかかることから応急的な処置で出来うる限りの事を行うこととした。初めに、仕切りと引戸のビニールシートを取り外し、アセトン等の溶剤を用いてビニールシートの粘った付着物を除去した。次に消毒用エタノールを用いてカビを除去した。綴織部分に被った埃はミュージアムクリーナーと筆で丁寧に取り去った。仕切の裂けた綴織箇所は地紋の色合いに合う絹糸を使い、要所を縫い合わせて補強した。破損したまま年数が経過し、表面が波打ってしまった綴織の表面を整えるため、綴織の幅に合わせた3mmのアクリル板を上に置き、綴織を本来の木枠の内部に押し入れた。次に、背面を修復するため、アクリル板の上にミュージアムボードを置いて背面が上部になるように返した。下部のガムテープはアセトンで除去し、綴織と背面板を安定させる保存方法を博物館担当者と技術者で検討した。その結果、木枠背面に最小限の面積に新補材を取り付けることで損傷した背面板を固定する方法を選択した。綴織の歪みを取って本来の位置に戻すため、綴織表面に置いたアクリル板と木片と黒ゴムで制作した補助材をクランプで抑えた(写真37)。木枠に打たれた一部の錆びた鉄釘をクリーナーで吸い御料車における内外装の保存処置―漆工・木工など73