ブックタイトル御料車の保存と修復及び活用

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概要

御料車の保存と修復及び活用

タノールを用いた。処置後は制作時の輝きを取り戻すことができた(写真33、34)。鏡と漆塗装部分のクリーニングは菊川こよみ氏、染織部分は須藤良子氏(女子美術大学)が担当した。写真32大鏡のクリーニング作業(8号御料車部材)写真33大鏡のカビと埃保存処置前(8号御料車部材)写真34大鏡のカビと埃保存処置後(8号御料車部材)漆塗膜の劣化が進行していなかったことから問題なく拭き去ることができた。綴織り部分は金箔と銀箔に損傷を与えないように注意し、厚く被った埃をミュージアムクリーナーと筆で取り去った(写真32)。鏡部分の仕上げには無水エ4-2仕切と引戸(8号御料車)の保存処置4-2-1仕切と引戸の概要8号御料車大鏡左右には綴織が貼り込まれた仕切と引戸が配されていた。仕切と引戸は枠部からとめん分に深紅色の漆塗りとし、縁の唐戸面に金蒔絵を廻らせ、要所に銅製金鍍金した透し金具を打つ。綴織りは花紋を幾何的に配置し、仕切では内部に霞に流水、蛇籠、桔梗と女郎花、引戸では霞に流水、蛇籠と菊花を描く。引戸は綴織の貼られた背面も同様の深紅色の漆塗りとし、枠いたふちめんと板縁面に金蒔絵を施す。法量:1845×62×30 mm制作年:1916年制作:綴織りは川島織物(川島甚兵衛)、漆塗りおよび蒔絵は不明4-2-2仕切と引戸の保存状態仕切と引戸は昭和31(1956)年に解体された後、ビニールシートで丁寧に包んでガムテープで止め、木箱に入れられ保管されていた。ビニールシートは54年間経過して著しく劣化し、表面が粘つく状態になっていた。シートを直接資料に被せたためその粘ついた材料が資料の広い面積に移ってしまっていた。また、空気の流通が悪くなってしまったために湿気が内部に溜まり、漆塗装面や綴織の表面にカビが著しく付着していた。仕切背面の板は10数枚の板を横に通し、上部と縦にT字型に漆で布着せをして補強していた。背面板は周囲の木枠に鉄釘で固定される構造であったが、損傷して木地が崩れて綴織が枠から外れ、綴織の一部が裂けてしまっていた(写真35)。背面板下部はガムテープで応急的に修理されていたことから、解体し72