ブックタイトル御料車の保存と修復及び活用

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概要

御料車の保存と修復及び活用

写真25展望室の扇風機保存処置前(10号御料車)写真27扉のカビ保存処置前(12号御料車)写真26展望室の扇風機保存処置後(10号御料車)写真28扉のカビ保存処置後(12号御料車)3-4.御料車外板3-4-1.御料車外板のクリーニングテスト平成19(2007)年3月にジェイアール東日本コンサルタンツ株式会社と東日本鉄道文化財団の担当者の立会いのもと東京総合車両センターに於いて鉄道博物館に移送予定の7号、9号、10号、12号の各御料車の外板のクリーニングテストを行った。テストには御料車外板の作業に関わる関東車両整備株式会社の17名が参加した。外板の塗装は、明治時代から大正時代初期に製造された御料車はペンキ塗りであった。5号、6号御料車の記録では、大正4(1966)年から大正5(1967)年に当初のペンキ塗りから深紅色の漆塗りに、昭和41(1966)年には漆塗りからカシュー塗りに塗り替えされた。7号御料車の外板も同じ時期にカシュー塗になった。7号ししあいたか御料車外板幕板中央の肉合高蒔絵で表されていた菊、鳳凰と唐草文様はこの塗り直し時に金箔貼りにされた。9号、10号、12号御料車は外板塗装の記録がない(注1)。御料車外板の塗装について大正14年の出版物に以下のような興味深い記述がある。『漆塗けってんへんしょくの缺點は太陽光線により變色することである。きんらい…これを防ぐため近來は素地塗までは漆塗の工程を施し、その上に「ペンキ」塗を試用して居る。そして漆の上に直接に「ペンキ」を塗ればそくざ?座に「ペンキ」は硫化作用を起すから、「ラッとふク」を漆の上に3囘塗附した上で「ペンキ」を使用するのである。』(注4)この記述のように塗り直しの際は他の材料も併用して塗り直しが行われている可能性もある。最終的に何の塗装材料を使われたか不明であることや、御料車の運用状況や保存環境によって劣化が進行して異なる状態になっていると考えられた。このことから各御料車の特徴的な箇所を抽出してクリーニ御料車における内外装の保存処置―漆工・木工など69