ブックタイトル御料車の保存と修復及び活用

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概要

御料車の保存と修復及び活用

写真19出入口ステップ外板塗装部の養生(7号御料車)天井から折上天井に変えられ、内装も洋風化して全体にシンプルになった。飾金具も必要最小限に打たれているのみとなるが、ラック塗装された木地部分と金糸を用いた刺繍や絹織物、綴織などのシンプルな対比が美しい(写真22)。展望室の両側には扇風機が一対配されるが、扇風機本体を朱漆塗りとし、金の薄肉高蒔絵で花葉文様を散らす(写真23)。12号御料車は大正13(1924)年に製造され、昭和34(1959)年に廃車となる。10号御料車からさらに洋風化し、ラック塗装に洋風な文様を付けた織物生地が用いられる。折上げ部分も壁面から同じ生地で貼るなど、内装の簡素化が目立つ(写真24)。飾金具は非常に少なくなり、他の御料車では綴織や刺繍が配されていた箇所には油絵が飾られていた。写真20カビの付着保存処置前(9号御料車御食堂扉)3-3-2 10号御料車・12号御料車の保存状態10号御料車および12号御料車は全体がシンプルになったことから、埃などの付着は少ない。しかし、傾向として漆塗装よりもラック塗装の方がカビに影響を受けると考えられ、12号御料車のラック塗装の各所に著しくカビが付着していた。また、10号御料車と12号御料車のトイレは部屋全体が白色塗料で塗られているが、塗装の剥離や亀裂が多く認められた。床の一部に焦げた跡があり、連合軍が使用した時に付けたタバコの跡ではないかと考えられた。写真21カビの付着保存処置後(9号御料車御食堂扉)3-3 10号御料車と12号御料車3-3-1 10号御料車・12号御料車の概要10号御料車は大正11(1992)年製造され、昭和34(1959)年廃車となった。昭和20(1945)年には連合軍に接収された経緯がある。展望室を設けて外部にデッキを付ける。内装は7号御料車や9号御料車で用いられた折上二重3-3-3 10号御料車・12号御料車の保存処置修理は埃をHEPAフィルター付きサイクロン掃除機で吸い取り、全体に水や消毒用エタノールと綿布を用いて拭き取った。10号御料車の扇風機部分は塗膜に艶があり、劣化が進行していないことから精製水を中心に用いた(写真25、26)。12号御料車のカビのクリーニングはラック塗装に傷を付けないように丁寧に行った(写真27、28)。剥離した箇所は出来る御料車における内外装の保存処置―漆工・木工など67