ブックタイトル御料車の保存と修復及び活用

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概要

御料車の保存と修復及び活用

つの時点かは不明であるが、開けられないよう固定され換気が困難なこと、また車内の装飾にテキスタイルが多用されていることから損傷を恐れるあまり清掃を行えずにいたため、ホコリが蓄積したことが要因ではないだろうか。以後、カビを発見した都度、対処療法的に乾いた綿棒や場所によりエタノールを含浸させた不織布で拭き取るなどの処置を行っていた。また平成21(2009)年からは市販の除湿機能付空気清浄器を設置し、24時間運転で空気清浄を行っている。平成25(2013)年3月に初めて車内の浮遊菌、付着菌の同定を行った。その結果、採集した箇所により多少の差異は生じたものの一般的にコウジカビ、クロカビとよばれる種を検出した。今後は、扇風機・空気清浄器を利用して、車内の空気が澱まないような工夫をするとともに、時期によっては除湿機能を使用して、全体的に湿度を下げること、さらに綿棒やクロスを用いて車内の平滑な壁面のクリーニングと床に張られた絨毯のホコリ除去などを行う予定である。御料車の修復当館での修理履歴は下記のとおりである。(1)平成9(1997)年に直営工事による漆拭き(2)平成24(2012)年度に、6月に台車の塗装(1)の漆拭きについては、御料車は、2両とも建造当初はペンキ塗りで、昭和の初め漆に塗り替えられ、さらに先にも述べたように、大井工場から明治村へ輸送される際にカシュー漆で修復したという記録が残されているが、以降何の手も入れられてこなかったため、平成9年、明治村へ移設されてから30年余りの年月を経て、御料車の車体外壁全体が白茶けるなど経年劣化の兆しが見られ、漆拭きをすることとなった。この時は建物修理工事に携わっていた漆職人の指導のもと、我々スタッフも漆拭きや金箔貼りを行った。(2)の台車の塗装も、明治村に御料車が到着して以来初めてであった。車体下部の台車の塗装であるが、ケレン作業での粉じんが御料車内へ入らないよう細心の注意を払って行った(写真32)。車両工場で車体を持ち上げて行うのではないため、できることに限りはあったが、手が届く、身体が入る範囲で丁寧に行った。使用した塗料は現用の車両にも用いられるフタル酸樹脂エナメルの黒とブドウ2号である(写真33、34)。ケレン作業を進めていくと、これまで確認できていなかった台車の鋼材の製造メーカーが次の通り判明した。5号御料車の台車には「Frodingham(フローディンハム)Iron & SteelCo.」という会社の刻印を見ることができた(写写真33塗装前の御料車の台車写真34塗装後の御料車の台車56