ブックタイトル御料車の保存と修復及び活用

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概要

御料車の保存と修復及び活用

ら台車・輪軸などの機能面の検査・調整を行ったうえで運ばれた(写真24、25)。修理などを終えた2両の御料車は昭和41(1966)年、国鉄大井工場から在来線の線路を走り、名古屋鉄道犬山駅でトレーラーに積み替えられて明治村へ輸送された。明治村へ到着後は、明治村の中に仮設の線路を敷いて(写真26、27)、基礎工事が終了しただけの鉄道局新橋工場の中へ納め、以後、御料車には養生を施し(写真28)、建物移築工事が粛々と進められていった。御料車を保管する鉄道局新橋工場の立地は、博物館明治村への入館者の多くが見学できるよう当初は周遊して最後の場所という理由で選定された。しかし選定された場所は、地形的には谷に位置しており(図1)、後に樹木の成長などが車内湿度の高さの一因となることとは、想像だにしていなかったであろう。竣工時の写真をみてみると、建物周囲の木々はそれほど成長しておらず、建物及び内部の収蔵品に影響を及ぼすほどではない(写真29)。しかし、現状の山側の樹木は「鬱蒼とした」という言葉がまさにあてはまるような状態である(写真30)。現在、御料車内でそれぞれ2か所ずつと外気の計5か所で温湿度を計測している(図2)。実際数値で確認してみると、平成23(2011)年10月から平成24(2012)年9月の御料車内の温湿度の状況は図3の通りである。湿度は60%を下回ることはない。そして温度も劇的な変化が起こるわけではないが、季節による変化が激しい。年間平均で単純に割り切れる問題ではないが、目安として提示すると温度が15.8℃、湿度が68.2%である。恥ずかしい話であるが、これら車内の温湿度については、最近データロ写真25幕板修理中の6号御料車写真26博物館明治村内の仮設線路上の5号御料車写真27博物館明治村の仮設線路上の6号御料車写真28工事中の建屋に収められた2両の御料車博物館明治村の御料車保存と活用53