ブックタイトル御料車の保存と修復及び活用

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概要

御料車の保存と修復及び活用

と同じく新橋工場で製造された木製3軸ボギー車で、車両の長さは20.728 m、重さは33.541 tである。この御料車は明治天皇崩御の2年ほど前に完成した明治時代最後のもので、その装飾の美しさにおいてはほかに並ぶものがないと形容される。大膳室・侍従室・御座所・侍従室・御寝室・御厠が備えられている。5号御料車と大きく異なる点は、御座所の背面に狭い通路が設けられ、侍従たちの移動の自由度が確保されている点であろう(写真16)。そして御厠の便器が漆塗り洋式便器に変化している点で生活様式の変化の兆しを見て取れよう。引き続き、以下に特筆される室内の装飾について紹介する。御座所天井には帝室技芸員を中心とした西陣の織元によって製作された亀甲の中に菊花のしょっこうにしき御紋を配した「蜀江錦」が張られ(写真17)、さいわいびしもん玉座の窓上の幕板には幸菱文の大和錦に金糸銀糸で菊花と桐が刺繍されている(写真18)。御座所の2箇所の出入口の上の櫛型には名古屋の安藤重兵衛の手による七宝で鳳凰と菊花の御紋が描かれ、扉には上下で異なる色漆に高蒔絵・螺鈿などで装飾を行っている(写真19)。侍従室側から御座所の出入り口上の装飾に目を遣ると、高蒔絵と螺鈿で桐と菊を描いている(写真20)。御座所の前後に設けられた侍従写真18 6号御料車御座所金銀糸で刺繍された幕板写真16 6号御料車御座所後ろ側に設けられた通路写真17 6号御料車御座所天井の蜀江錦写真19 6号御料車御座所色漆・高蒔絵・螺鈿で装飾された扉博物館明治村の御料車保存と活用51