ブックタイトル御料車の保存と修復及び活用

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概要

御料車の保存と修復及び活用

及び検討時間が取れないままの導入となったため、外観の色味が変わってしまったことは反省すべき点である。博物館で使用する光源には省エネ・環境への配慮、効果的な演出も必要だが、資料の損傷を防ぎ、かつ資料をあるべき姿で正しく見せる光源が求められる。今後は車内へのLED照明導入を検討することになるが、天井灯の調整も進めながら慎重に検討していきたい。また、この専用展示室は、入る人間は限られているとはいえ、多くの来館者がやってくるヒストリーゾーンに隣接しており、生物被害の危険性が少ないとは決して言えない。今後は文化財IPM(総合的有害生物管理)の考え方を取り入れた対策を行うことが重要であると認識している。現在、少しずつ取り組みを始めたところで、粘着トラップを用いた調査、床面の清掃、展示室の隙間を埋める処置を行いながら経過観察を行っている(写真44)。また明治期御料車展示室においては土足禁止とし、専用スリッパあるいは靴カバーの使用をお願いしている。移設前は、車内に大量の防虫剤(樟脳など)を使用していた。そのため特有の臭いが非常に強く残っていたため、しばらく不使用としていたが、平成24(2012)年より、明治期車両内に文化財用の防虫剤を設置し始めている。車内の清掃に関しては、企画展示の撮影のために学芸員による簡易清掃を行った他、専門家による展示資料のクリーニング・一部修理を行った(平成22(2010)年7 ? 8月)。さらに行幸啓にあたり、専門家による簡易清掃を実施している(平成22(2010)年12月)。今後は展示室だけではなく、このような車内の定期的な清掃についても、どのように継続して行うか検討していかなくてはならない。平成23(2011)年3月の東日本大震災時は、当館の所在するさいたま市大宮区は震度5強であった。館内の車両模型などが倒れるなど被害が発生し、御料車も損傷が懸念されたが、御料車展示室のガラス2か所がひび割れ、車両止めが一部変形、また一部の車両の扉が開閉した等は確認されたが、幸いにも御料車自体に目立った損傷は見受けられなかった(写真45)。(2)展示活用について御料車の中に入りたいという要望は数多く寄写真44隙間を埋める処置。レールがあり完全に塞ぐことができないため、粘土、アルミテープを使用。扉の下はブラシ状のテープを使用し、害虫の侵入を防いでいる。写真45 震災時には展示室のガラスが損傷したが、幸い車両に被害は及ばなかった。鉄道博物館の御料車43