ブックタイトル御料車の保存と修復及び活用

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概要

御料車の保存と修復及び活用

鉄道博物館の御料車嶋立良晴副館長/学芸部長田邉優子学芸部主任公益財団法人東日本鉄道文化財団鉄道博物館1.はじめに御料車とは、天皇・皇后・皇太子・皇太后が乗られるための専用客車である。これまでに明治、大正、昭和にかけて18両が製造された。御料車はそれぞれの時代において最高の車両技術と内装美術で造り上げられ、「動く美術品」「走る宮殿」とも称されている。しかし詳細については、その使用目的から、取り上げられる機会が少なかったのが現状である。また、鉄道車両という近代産業資料でありながら、内外に一級の美術工芸資料を備えるという類稀な状況は、博物館における資料保存・活用を考える上で、悩ましい問題を持つ資料群ともいえる。当館では6両の御料車を保存展示している。すなわち、明治期の1号、2号御料車(共に初代)、大正期の7号、9号、10号、12号御料車と、また解体された御料車の一部の部材を収蔵している。本稿では、一般にあまり知られていない御料車がどのような資料であるかを知っていただくことを目的として、当館所蔵の御料車の概要と、現在の保存・展示活用の状況を紹介したい。2.御料車と御召列車の歴史まず最初に、簡単に御料車の歴史について述べる。明治天皇が初めて公式の御召列車に乗られたのは、1872年10月14日(明治5年9月12日)、新橋?横浜間に開業したわが国最初の鉄道が開業した日である(写真1)。この時使用されたのは専用の御料車ではなく、上等客車ぎょくしゃ」やを改装したものであった。当時は「玉車ほうしゃ「鳳車」と呼ばれていた。初めての専用車両である「御料車」が造られたのは、1876(明治9)年のことである。なお、「御召列車」と「御料車」の違いについてよく聞かれるが、「御召列車」は、天皇、皇后のご乗用として特別に運転写真1「汐留ヨリ横浜?鉄道開業御乗初諸人拝礼図」三代歌川廣重画1872(明治5)年中央に飾り立てた客車が描かれている。26