ブックタイトル御料車の保存と修復及び活用

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概要

御料車の保存と修復及び活用

台湾に残る御料車さて、これまで国内に残る御料車に関して話を進めてきたが、実は台湾にも御料車が残されている。かしゃ「花車」と呼ばれ、現在でも台湾交通部鉄路管理局が所蔵していることになっている。車番はSA4101である。筆者が訪れたのは2011年10月であるが、台北市内から国鉄にのり、40しちと分程走った『七堵』という駅の操車場の中に保管庫はあった。コンクリート製の保管庫の中に、皇室専用車(SA4101)と台湾要人用花車(SA4102)及び新型の総統用車両(SA32820)の3両が保存されていた。SA4101は大正元(1912)年、台湾において皇太子嘉仁親王の台湾視察に供すべく製作された車両であるが、同年の明治天皇崩御により、沙汰やみとなる。その10年後に皇太子裕仁親王が台湾視察に訪れた際に御召列車として使用された。SA4102は明治37(1904)年台湾にて、台湾の要人用に製作された車両である。SA4101及びSA4102の内部(家具調度品等)に関しては、平成21(2009)年に予備調査がなされており、その段階で、当初のものあるいは後補のものなどについての選別作業はある程度できている状態である。台湾にて聴取した話では、当時、皇族が外地で列車に乗る際には、家具調度品等はすべて日本から持参したと言う事であった。どこまで細かいものを持参したのか定かではないが、現在も台湾博物館には、SA4101の側面中央に取り付けた菊の御紋が保存されており、筆者が訪台する数年前に日本から漆の修復家を招いて修復作業を実施していた(写真11)。台湾に残る御料車に関しては今回講演いただいた中原大学の黄先生のお話の中で詳しく述べられているので、私の方の話は簡単に触れるにとどめることにしたい。ニュースとして聞いたところでは、台湾国鉄が花車のレプリカを製作し運行するとのことであった。それも活用法の一つであろう。昨今、JR九州等で豪華列車の旅ということで、新たな市場を開拓しようとしている、列車を使った旅に関する見方も変わってきている。そのようななか、少しでも御料車の様子を知ってもらえるような活用方法を考えていきたい。写真11参考資料・注釈1)『鉄道博物館開館3周年特別企画展御料車?知られざる美術品?』鉄道博物館(2010)2)『日本国有鉄道百年史』各巻日本国有鉄道(1969 ? 1974)3)『鉄道博物館THE RAILWAY MUSEUM』ハンディー版鉄道博物館(2012)田邉幸夫『御料車物語』レールウェー・システム・リサーチ(1986)『修護台博館台南藝大修護研究成果専集』台湾博物館(2009)14