ブックタイトル御料車の保存と修復及び活用

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概要

御料車の保存と修復及び活用

写真9裂地がさけたソファの肘掛け写真10修復後裂地製品に関しては上記の通りであるが、その他に漆を塗った壁、金工細工の小物類、灯具などのガラス類など多岐にわたる装飾品が御料車の内部及び外部を彩っており、それらの劣化及び修復に関しても注意する必要がある。特に漆塗りの外板等は紫外線による劣化が進んでいるので注意が必要である。御料車の活用についてここで少し御料車の活用について見てみたい。鉄道博物館と博物館明治村では、保存展示を行っている。鉄道博物館では、車両が保存されているスペースを隔てるガラス越しの観覧であり、内部を細かく見ることなど到底不可能である。博物館明治村の状況は、ガラス越しではない分、鉄道博物館に比べればまだましという状況で、内部の装飾品を守るために照度を落として内部を照らしているので、内部の装飾品は一部がかろうじて見える程度で非常に残念である。その代わりに、鉄道博物館では、車両の前に内部装飾品の写真と解説が通路に設置されているので、観覧者にとってはうれしい配慮である。また、博物館明治村では、不定期ではあるが数度、御料車の中を横断する見学コースを設定し、アクリル板で仕切った横断通路をわたりながら部分的ではあるが、内部の装飾品類を観覧することができるようになっている。鉄道博物館でも定期的に、ガラスの仕切りの中の通路を限定された人数だけに係員が付いて、ガイドをしながら観覧できる機会を設けている。また、鉄道博物館では、本編の参考資料ともなっているが、御料車に関する特別展を幾度か開催しており、その時には普段見ることができない車内の様子等を写真や模型で公開している。御料車という、同じものが二つとない車両の展示なので、慎重にならざるを得ないのもうなずける話であるが、やはり、展示空間内部を歩いて見学したい気持ちもよく理解できる。どこに妥協点を見いだせるのか、あるいは全然別の手法で観覧できるようにするのか、工夫のしどころである。御料車の保存と修復13