ブックタイトル御料車の保存と修復及び活用

ページ
12/106

このページは 御料車の保存と修復及び活用 の電子ブックに掲載されている12ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

御料車の保存と修復及び活用

11 11号御料車10号御料車と同じくイギリス皇太子来日に際して大井工場にて製作された食堂車である。10号車と同様に昭和20年に連合国軍に接収され、講和条約締結後に解除になり返還されたが昭和44(1969)年に解体された2)。12 12号御料車昭和天皇が摂政宮時代に大井工場で製作された。製作中に関東大震災に遭い完成は大正13(1924)年自重36.4 tの大型木製3軸ボギー車だが、木製ボギー車としては最後の御料車となった3)。現在は鉄道博物館にて保存展示されている。(写真8)これ以降の昭和に入ってから製作された御料車は、鋼製3軸ボギー車になったり、国賓として製作されたりしている。概要は表1を参照されたい。御料車の保存状態に関して前述した御料車は現在、以下の3カ所に分かれて保存されている。・JR東日本東京総合車両センター(旧大井工場)内の車庫・鉄道博物館・博物館明治村である。鉄道博物館では、重要文化財に指定されている1号御料車を含め6両の御料車が、ガラスで仕切られた空間に保存されている。特に1号御料車と2号御料車については温湿度管理がなされた空間となっている。JR東日本東京総合車両センターでは、鉄道車両用の車庫の中に保管されている。博物館明治村では、旧新橋工場の建屋が移築されておりその中に保存展示されている状態である。JR東日本東京総合車両センターでは保存している車両の公開は行っていない。鉄道博物館を除いて温湿度管理がなされている訳ではないため、いわゆる、美術工芸品を保管するという意味では、あまり適した環境とは言えない。さらに、御料車という特殊な車両であるが故に、展示しているといっても常時内部を公開している訳ではないために、内部の空気が滞留しやすい環境となってしまうのはさけられない現実である。そのため黴の発生等が懸念される。現に博物館明治村では黴の発生が見られたために、清掃を行った後、車内に除湿機を設置し、さらに定期的に車内の空気を入れ替える処置を施している。鉄道車両という保存している物の大きさに加えて、それを保存している建物も大きいために、建物全体の温湿度管理をすることが難しいのが現実である。御料車の装飾品の劣化および修復について各車両の概要及び一覧表にも示したように、御料車には美術品的価値の高い装飾品が数多く取り付けられている。それらは壁、天井、扉といった部分に描かれた絵画や壁を飾る裂地だけではなく、家具調度品についても優れたものが取り付けられている。そのような装飾品であるが、完成してから既に100年を経ている車両も数多く、家具調度品や壁を飾る裂地などの劣化が著しくなってきているのが現状である。そのなかでもソファや椅子の座面や背もたれの部分、あるいは肘掛けなど、もともと張力をかけて製作されている部分の裂地の劣化がひどく、糸が切れてしまい表面の裂地がさけて中綿やスプリングが見えてしまっているものが見受けられる(写真9)。また、カーテン等に関しても、かけられた状態のままおかれていたために、埃をか10