近代建築に使用されている油性塗料

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近代建築に使用されている油性塗料

68ではありません。油性塗料は合成樹脂塗料より性質が劣ると言われることがありますが、私は今までの経験を通して、決してそうとは思いません。例えば、劣化した部材には処置をしたうえで塗装をします。ですから、塗装だけではなく部材の処置や施工方法も伴わなければ、この油性塗料の使用は成り立たなくなると感じています。(研究会参加者)油性塗料は合成樹脂塗料と比べて、耐候性が劣るわけではありません。言い替えると、合成樹脂塗料は油性塗料よりも遥かに耐候性が良いとは断言できません。例えば、フッ素樹脂、合成樹脂や長油性フタル酸樹脂などの油変性させたものと比べて、油性塗料の耐候性は劣っていません。ただ、総合して考慮すると、乾燥するのに時間がかかり作業効率が悪くなるため、時代にそぐわないということが、油性塗料の衰退の大きな理由の1つであると思います。(大澤 茂樹)● 文化財修理における油性調合塗料の製造先について私は重要文化財の設計管理を担当していまして、ある現場で油性調合塗料を使わなければいけない状況になっています。偶然ですが昨年、国内のすべての塗料製造会社に、「実際に油性調合塗料を製造してもらえるかどうか」ということを質問しました。大手製造会社はもう製造をしていませんが、そのうちの1社から「小さな製造会社であれば製造してくれるかもしれない」という話を聞きました。調べましたら2社ほど、一斗缶1つからでも製造可能なところがありました。ただ、そちらでは、製造はできますが成分の調合ができませんので、やはりレシピ作りは大手製造会社の協力が必要だろうと思いました。実際のところ、重要文化財の修理は未来永劫続きますし、油性塗料のおおよその使用量は各現場にて判明するかと思いますので、計画的に製造し購入することができればと思います。これまでのお話を聞いていますと、もはや製造されてないことを悩んでも仕方ありませんので、製造会社、塗装業者や保存修理関係者で製造に向けての検討会などはできませんでしょうか。アイデアとしては決して悪くないと私も思います。私も、ドイツで油性塗料をどんな量でも製造してくれる方を知っていますが、価格はやはり少量ですと高くなります。油性塗料の入手先はまだあると思っていますが、国内で手に入ればそのほうが良いと思います。油性塗料について、これまでに現場や化学者の方々からお話を聞きました。それらの意見をまとめるのは非常に難しいことですが、これからも油性塗料を使い続ける需要はあるだろうと私も考えています。手に入らないという理由のみで材料を変えてしまうのは、少々ぞんざいですし、よく探してみるとそれが手に入るということもあります。ですから、歴史的根拠と分析結果が明確な対象物については、できるだけ油性塗料を使用したいと思います。(中山 俊介)