近代建築に使用されている油性塗料

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近代建築に使用されている油性塗料

66ることが有益であろう。場合によっては、そうすることでバインダーを確認する前に、他の取り除くべき顔料などが見つかることもある。しかし、数理的に修正変更されたスペクトルから結論を引き出すには十分に注意を払い考慮する必要がある。経年劣化も表面塗装膜のスペクトルの解釈を難しくする。酸化と水酸基の形成については既に述べたが、劣化にはより多くの要因がある。エステル反応の説明にて、加水分解と酸化分解について言及している。エステルの加水分解は、1710cm-1でエステルのシグナルが減少するので確認することができる。ほとんどの場合、酸の生成はカルボキシル酸のシグナルの発生により認められる。通常、(顔料、保護塗膜を施された金属品、乾燥剤や塗料に含まれるその他の微量成分には)陽イオンが存在するため、遊離酸の替わりに脂肪酸のアルカリ塩が形成される。それらは、対称的と非対称的なC-O伸縮振動(概して1450cm-1と1550cm-1辺りの2つのシグナル)によって同定することができる。表面塗膜の成分の同定をする際には、塗膜片の裏表を調べることが有用である。なぜならば、露出している面は変質と劣化が進み、バインダーも劣化するからである。そのため、塗膜片の両面を比較した場合、露出している面に酸化物が確認される一方で、その反対の露出していない面は、最初の状態からほとんど変化していないということがある。一般的に、赤外分光法は塗装材料の分析において有益である。バインダーの種類、多くのフィラーや顔料を容易に同定し、時には劣化の種類をも知ることができる。さらに、樹脂が特徴的なシグナルを持つのであれば、塗料に添加された樹脂の確認も可能である。しかし、赤外分光法にて、より詳細な分析をする場合には限度がある。例えば、油性塗料とアルキド樹脂塗料を識別することは可能だが、使用された乾性油を特定することは不可能かもしれないのである。そのような分析には、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)といった他の分析装置の使用が必要となるのである。参考資料・出典Blom, A.V., “Grundlagen der Anstrichwissenschaft”, Birkhauser, Basel, 1954[Ed.] Chatfield, H.W., “The Science of Surface Coatings”, Ernest Benn Ltd., London, 1962Payne, H.F., “Organic Coating Technology”, John Wiley & Sons, Inc., New York, 1954