近代建築に使用されている油性塗料

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近代建築に使用されている油性塗料

64識別は可能であるが、脂肪酸の種類は識別することができないのである。しかしながら、不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸の判別は可能である。図9にみられるように、すべての不飽和酸のスペクトルは酷似している。ただ、エステル基の存在のみは確認が可能である。また、3015cm-1に出る炭素-炭素二重結合振動から不飽和結合の存在を、730cm-1のシス異性体の吸収から油の存在を確認することができる。天然油では、3015cm-1での吸収帯の強度から、オリーヴ油、亜麻仁油などの多価不飽和油の識別が可能である。しかし、乾性油の塗膜は乾燥すると多価不飽和酸構造を消失するため、塗料の同定には結びつかなくなるのである(図9)。実際の塗装材料のスペクトル分析前述したように、塗料にはバインダー以外の成分も含まれている。塗装材料のスペクトルを分析するためには、まず油と未変化ポリマーのスペクトルを知ることが役立つであろう。たいていの場合、これらのスペクトルには何らかのフィラーや(通常、いくつかの)顔料が強く現れる。検出し易いものもあるが、しばしば塗料の一部の成分のシグナルが、他のもののシグナルを隠していることがある(図10)。石膏(硫酸カルシウムCaSO4)は3400cm-1でのO-H伸縮振動により、容易に確認することができる。幅が広く対称的なこのスペクトルは、石膏が含まれている場合、3525cm-1と3400cm-1に2つのピークを示すのである。加えて、1680cm-1、1618cm-1、1115cm-1(最も強い)、670cm-1、600cm-1(強い)にもシグナルを持つ。チョーク(白亜)(炭酸カルシウムCaCO3)には、特徴をとなる3つのシグナルがある。1415cm-1での強く少々幅の広い吸収帯が、この領域の炭素結合の面内変角と重なる。そして、874cm-1と712cm-1に2つの強いシグナルがある(図8)。タルカン(滑石Mg3Si4O10(OH)2)も3つのシグナル ─ 670cm-1(強い)、1011cm-1(非常に強い)と3675cm-1 ─ によって、判別が可能である。3675cm-1のシグナルは鋭く弱いものであるが、この領域には他に目立つシグナ図9 4つの天然油の赤外線スペクトルの比較