近代建築に使用されている油性塗料

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近代建築に使用されている油性塗料

60かった。脂肪酸と反応させた場合にのみ、表面塗装材に適した優れた特性を持つ新しい種類の樹脂に生まれ変わったのである。これらの樹脂は、脂肪酸分子部分にポリエステル鎖を有している(図5)。現在では、脂肪酸としてはフタル酸以外に二塩基酸が、アルコール類としてはグリセリン以外に二価アルコールも使われるようになった。マレイン酸とフマル酸については前述したとおりであるが、イソフタル酸、テレフタル酸やトリメリト酸もこの反応に使われることがある。そして、ペンタエリスリトール、ソルビトールやそのほかの糖誘導体もグリセリンの代替物質として使われる。それゆえに、市場には様々な種類の異なるアルキド樹脂が存在する。これらの樹脂には、他の合成樹脂や天然樹脂と同様に乾性油を加えることができる。そして、油とアルキド樹脂を混合することで、複合ポリマーを生成することも可能である。また、これらの物質をポリウレタンと混ぜて、油変性ウレタン塗料を製造することもできる(表4)。アルキド樹脂生成の第一段階は、グリセリンとフタル酸といった組み合わせのポリエステルの形成である。CH2OH ? ?│              CHOH + HOOC-C6H4?COOH →│              CH2OH ? ?    CH2OC(O)C6H4COO─…..    │CHOH    │    CH2OC(O)C6H4COO─…..グリセリン(第二級アルコール)のβ位は、この段階では反応しない。そして、第2段階の脂肪酸との縮合によって、そのままでも従来の油性塗料と混合しても使用することが可能なアルキド樹脂が生成される。現代の合成技術では、アルキド樹脂の生成において、これらの2段階の手間を必要とせず、一度に油を酸とアルコールで反応させる。しかし、このような条件の場合、油が含む脂肪酸はグリセリンが有するどの水酸基とも反応することがあるため、様々な種類の生成物が発生してしまう。従来のグリプタルは、網目構造を構築することができない鎖状分子である。分子間の網目構造形成には、不飽和カルボン酸が不可欠であ図5 アルキド樹脂の構造表4 アルキド樹脂の成分二価カルボン酸多価アルコール類油類フタル酸グリセリン亜麻仁油イソフタル酸グリコール大豆油テレフタル酸ペンタエリスリトール桐油(アブラギリ)トリメリト酸トリメチロールプロパントール油──ひまし油マレイン酸ソルビトールリシニン油(脱水ひまし油)フマル酸─ココナッツ・パーム脂(油)アジピン酸──セバシン酸──