近代建築に使用されている油性塗料

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近代建築に使用されている油性塗料

塗装技術の歴史 (開発、原料、性質、反応、及び油性塗料とアルキド樹脂塗料の同定)  59トリグリセリドの反応トリグリセリドはエステル類なので、アルコール分解、酸化水分解やエステル交換といった通常のエステル反応を起こし得る。酸加水分解はアシル基の置換であり、エステルと酸の相互作用によって起きる。RCOOR’ + R”COOH → R”COOR’ + ROOHこのような反応は亜麻仁油をロジンと熱する場合にも起きる。アルコール分解はアルコールによるエステル結合の開裂である。反応の過程において、新しいエステルが形成される。RCOOR’ + R”OH → RCOOR” + R’OHこうして、トリグリセリドはグリセリンの作用によって、モノグリセリドやジグリセリドに変えられる。CH2OC(O)R   CH2OH│   │CHOC(O)R   + CHOH →│   │CH2OC(O)R   CH2OHCH2OC(O)R   CH2OC(O)R│   │CHOH     + CHOH│   │CH2OC(O)R   CH2OHこれは、塗装材料の製造において発生する主な化学反応の1つである。エステル交換は、2つのエステルを反応させた際に起こるアシル基の交換である。脂肪を高温度で熱すると起きる反応であり、不乾性油を半乾性油に変質させるのに使われる。RCOOR’ + R”COOR’’’ → R”COOR’ + ROOR’’’上記の3つの反応は、乾性油とアルキド樹脂の製造に使われる。天然油(グリセリンと脂肪酸)の他に、二価または多価アルコールであるペンタエリスリトールやソルビトール、フタル酸異性体、マレイン酸やフマル酸といった二価酸もこのような反応に関与する。エステル類のもう1つの反応には、エステルが遊離脂肪酸(アルカリが存在する場合は脂肪酸アルカリ金属塩)とアルコールに分解される加水分解がある。これは、膜形成においては重要ではないが、古い塗膜の劣化に関わっている。他にもいくつかの劣化反応があり、脂肪酸分子の不飽和系と関係している。多くは酸化反応であり、前に述べた膜形成と類似する。これらの反応は、アルコールやケトを形成し、最終的には、分子鎖の開裂と塗膜の劣化を生じるのである。この反応過程では、低分子量の二塩基酸がしばしば生成する。そして、塗膜全体は脆くなり、溶剤にも溶解しやすくなるのである。CH3(CH2)7CH=CH(CH2)7COOH → オレイン酸CH3(CH2)7COOH + HOOC(CH2)7COOH ペラルゴン酸       アゼライン酸このことについては、後述の「赤外分光法による塗膜の同定について」にて、また紹介する。塗装材料としてのアルキド樹脂前述したように、ほとんどの場合、乾性油の単独使用は表面塗装剤としては柔らかすぎるため、樹脂と混ぜなければいけない。過去には、琥珀やコーパルといった天然樹脂が使われていたが、今日ではそれらのかわりに合成樹脂が使われている。そして、表面塗装の目的に最も適しているのがアルキド樹脂なのである。最初に現れたアルキド樹脂は、グリセリンとフタル酸の反応から生成されるポリエステル化合物のグリプタルである。グリプタル樹脂は乾性油と混ぜる必要があり、その特性は優れたものではな