近代建築に使用されている油性塗料

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近代建築に使用されている油性塗料

56重結合を持つ油のみが、安定した膜を形成することができる。3つ以上の二重結合を持つ脂肪酸は、魚油によくみられる。こういった脂肪酸において、最も一般的なものは、4つの孤立二重結合を持つアラキドン酸である。アラキドン酸は、高い栄養価でよく知られているが、塗料製造分野においても広く使われている。天然油に見られる脂肪酸には、二重結合以外にケトンやヒドロキシといった官能基を有するものがある。なかでも、ひまし油に多く含まれる酸であるリシノール酸は重要なものである。リシノール酸には、アルコール基があり、脱水によってさらに二重結合を生成させることもある。このほかの特殊な種類の脂肪酸として、3つの共役二重結合に加えてケトン基を持つリカン酸をあげることができる。これについては後で述べる。乾燥過程乾燥とは、ラジカル反応によって起きる現象である。油は、様々な成分から構成される複合混合物であり、単純な化学方程式で表すことはできないが、網目形成が酸化から始まるということは知られている。この反応の第一段階が、炭素-水素結合のホモリシス開裂によるラジカルの形成である。炭素-水素結合の結合力は、通常、非常に強く安定しているが、二重結合と隣り合う水素原子は、どちらかというと容易に引き抜くことができる。水素の周りの二重結合が多ければ多いほど、結合力は弱くなる。多価不飽和脂肪酸の多くは以下のような構造をもつ。─CH2─CH=CH─CH2─CH=CH─CH2─ . (1)分子鎖には2つの孤立二重結合がある。それらに挟まれたCH2(メチレン基)の水素原子は、非常に不安定なものである。まず、最初に水素原子の1つが光または熱エネルギーによって引き抜かれる。これによって、アルキルラジカルが形成される。─CH2─CH=CH─C*H─CH=CH─CH2─ + H*. (2)アスタリスク(*)は水素のホモリシス開裂によって生成した不対電子を表す。形成されたラジカルは、不対電子がいくつかの炭素分子によって共有され非局在化することで安定する。その結果、二重結合が生じる。この状態を表す構造には、以下の3つがある。─CH2─CH=CH─C*H─CH=CH─CH2─ (3a)リノレン酸COOHH3Cアラキドン酸COOH581114CH3リシノール酸HHHOHH2CH2C(CH2)7(CH2)5CH3COOH=CCCC=CC