近代建築に使用されている油性塗料

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近代建築に使用されている油性塗料

塗装技術の歴史 (開発、原料、性質、反応、及び油性塗料とアルキド樹脂塗料の同定)  51ので厚みのある膜が形成される。基本的に、安定した表面塗膜を得るには、油と樹脂を適切に混合させる必要がある。合成樹脂の系図塗装材料において、琥珀、化石化または半鉱化したコーパルは、塗料の貴重な樹脂原料である。しかし、これらは高価で希少なため、塗料メーカーはより安価で入手しやすい樹脂の利用を試みてきた。特にヨーロッパ全土で豊富なロジンがその対象となっている。ワニスの樹脂成分としてロジンを使う試みは多くあるが、天然のロジンには重大な欠点がある。それは、非常に軟らかく、いくつかの顔料と混合するには適さない高酸性であり、黄色変化しやすく耐候性が低いことである。そこで、石灰(水酸化カルシウム)や酸化亜鉛と反応させることによって、ロジンをより硬く耐久性のある素材に変質させる試みが行われてきた。結果として、酸性基の中和と樹脂酸塩の形成がみられ、この生成物が硬質樹脂として知られている。合成樹脂開発における次の段階は、ロジンといくつかのアルコール(特にグリセリン)からエステルを形成することであった。この生成物は、より硬く、塩基性顔料と混合した場合、より良い適合性がみられた。これがエステル樹脂である。1910年にカート・アルバート(Kurt Albert)は、ロジンをフェノール類と融合することによって、いくつかの注目すべき樹脂を創出したが、これらの合成樹脂はまだ暗色変化を免れないものであった。これらはアルバトールやベッカサイトなどの商品名で知られることとなった。多くの場合、この種類の合成樹脂の製造では、エステル樹脂を改質させるためにフェノール類が使われた。それによって製造された樹脂は、非常に硬く耐久性もあり酸性基を含まないものであった。ただ、唯一の欠点は、若干の黄色変化する傾向であった。その後の合成樹脂の進化では、ロジンとマレイン酸(より正確には、無水マレイン酸)を反応させた、二重結合が少なく酸化しにくく、かつ暗色変化しにくい複合物質の生成があった。この反応過程では、マレイン酸の二重結合がアビエチン酸の共役二重結合に加えられ、新たに脂肪族環が形成される。これらの生成物には共役二重結合が存在しないため、黄色変化しにくく、薄色の塗料の製造での使用に適していた(図1)。最も古い合成樹脂の一つに、コールタールを蒸留した際に生じる副産物であるクマロン?インデン樹脂がある。最初にその特許が取得されたのは1890年であるが、1912年前には塗料製造材料として適切とはされなかった。しかし、第一次世界大戦中と1920年代には広く使用さ図1 ロジンと無水マレイン酸の反応+OOHOOOHCHCOHCHCOOOHOOHCHCOHCHCレボピマール酸マレイン酸ディールス-アルダー反応生成物