近代建築に使用されている油性塗料

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近代建築に使用されている油性塗料

401.塗装の起源 ─ 塗装とは ─塗装の起源については明確な文字記録がないうえに、現代の塗装作業には、塗る、吹く、埋める、貼る、砥ぐ、磨く、撒くといった諸作業が混在しているため、断片的な一動作のみで、それを塗装と断定することは難しい。「塗る」という作業は、人類の歴史と共に存在してきた。古代人が美的意識や宗教的な意味合いで、赤土を身体に塗り付けたり、散布したりする風習から、次第に土質や岩石を砕いて得られる色材(無機顔料)を植物の汁、獣脂、卵白、石灰乳や水等に混ぜて塗るようになる。「塗装」とは、塗料を物体(被塗物)表面に塗り広げ、要求される目的を達成する塗膜を造る作業であり、塗料の存在が不可欠である。塗料は、塗膜を形成する主要素(展色剤・ビヒクル)や色材(顔料・染料等)と造膜に必要な助要素(補助剤・溶剤類)からなっているが、一般的に主要素の成分で塗料名称が付けられ、分類される。塗装の主な目的は、被塗物を劣化から守る保護機能と美しさを付与する美装機能とされるが、現代では塗料工学や塗料性能の著しい進歩及び発展により、防露、遮熱、絶縁、環境保全等の機能を物体に付与する目的がクローズアップされ、精密機器や電子機器、またIT、宇宙工学といった先進技術分野の製品にまで需要が拡大している。日本古代史上に出てくる塗装は、「漆塗り」、「丹に塗ぬり」、「柿渋塗り」が代表的塗装である。一方、近代建築の塗装は「油性塗料」の導入からスタートする。20世紀に入り、科学技術の発展に伴い建設用各種合成樹脂塗料が出揃うまで、油性塗料が建設・船舶塗装の主要な塗料であった。2.油性塗料の出現古代、中世、近世において油性塗料が使用された明確な検証資料は見当たらないが、中国では紀元前後に油性塗料が作られていたといわれている。紀元2?3世紀のものと思われる陶とう宋そう儀ぎの随筆集といわれる『輟てっ耕こう録ろく』に、「鰻うなぎ水みずを作るには上等の桐油を水と共に加熱し、音を立ててさわぐようになったら、鉛丹、鉛白及び無む名みょう異い (酸化鉄を有する赤粘土)を加え、水をさして、又加熱する。蜜のような状態になるのを限度として加熱を止め、放ほう冷れいして油と水が等分になるようにする」とある。この鰻水とは油性塗料を指しているとの論説を、塗料・塗装界の大先輩である故広瀬誠一先生が述べている。かつてペンキを「トロ」と称し、ペンキ屋を「トロ屋」と呼んでいた時代もあったことを思うと興味深いものがある。現在、法隆寺大宝蔵院に納められている国宝の玉たま蟲むしの厨ず子しにも油性塗料の存在が議論されている。玉蟲厨子は推古天皇の厨子といわれ、製作者、製作年代ともに不明であるが、作風は古朝鮮風で飛鳥期の絵画、彫刻の粋が凝縮されている。厨子は高さ2.26m、幅1.3m、奥行1.19mで宮殿部、須しゅ弥み座ざ、台座の三つの部分からなり、須弥座の四面には仏画が描かれている。檜ひのき造りの外面には厚く透すき漆うるしが塗られ、厨子の柱、基壇の側面には玉虫の羽が張り詰めら近代建築に使用された油性塗料の変遷大澤 茂樹大澤塗装株式会社代表取締役社長