近代建築に使用されている油性塗料

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概要:
近代建築に使用されている油性塗料

34箇所は、1階外部の唐戸の丁番金具の下からで、当初に塗られた後、金具により保護された部分である。測定内容は、X線回折、赤外吸収スペクトル測定及び定量分析である。測定装置については、修理工事報告書に詳細が記載されている。測定結果としては、呈色顔料として、白色の体質顔料成分が検出された。炭酸カルシウム(CaCO3)や硫酸バリウム(BaSO4)、酸化亜鉛(ZnO)、硫化亜鉛(ZnS)などである。バインダー(結合剤)成分としては、赤外吸収スペクトル測定にて1740cm-1付近にショルダーがみられることから、ボイル油などのエステル結合を持つ成分と判断された。これらの結果により、ペンキが使用されていたことがわかった。また、白色以外の顔料が検出されなかったため、炭素(C)に関する定量分析を行ったところ、19.4%の炭素が検出された。白ペンキに炭素を原料とする塗装を行った類例として、少し年代が下るが、明治43年(1910)建築の北海道の旧函館区公会堂本館がある。昭和57年(1982)の半解体修理の際、詳細な調査を基に、松煙を混ぜた灰色で施工された。青みがかった灰色の外壁の下見板がその塗料である(写真8)。旧睦沢学校校舎の保存修理工事においても、白ペンキに松煙を調合することを実施仕様とした。材料は、油性調合白亜鉛ペイント、ボイル油、乾燥促進剤、松煙、パテである。油性塗料は、現在、国内で一社のみの取扱いである。調合は現場にて行い、白色の油性調合ペイントをベースに松煙、ボイル油を混ぜ、当初の塗膜に近い色を作った。山梨県下には、旧睦沢学校校舎以外にも擬洋風建築が残されており、県指定文化財に指定写真7 旧睦沢学校校舎-移築後- ?公益財団法人 文化財建造物保存技術協会/青柳茂(撮影)