近代建築に使用されている油性塗料

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概要:
近代建築に使用されている油性塗料

文化財の修復事例からの油性塗料の使用実績等の概要  33される。塗装色については、大正10年(1921)の写真と移築前の写真では異なることがわかる(写真5)。1階のポーチや建具の色は水色が塗られているが、大正10年時にはもっと濃い色が写っている。これまでの修理では、旧の塗膜を残しながら塗り重ねを行っていたため、今回の移築に併せて、改めて塗膜の調査を行うと、当初に遡る塗膜が判明した。塗膜の調査では、塗膜層を丁寧に分析しながら年代判断を行う。修理は、昭和59年(1984)、昭和41年(1966)、昭和26年(1951)に行われたことがわかっているが、この時代の塗膜の下に、とりわけ1階外部の唐戸の丁番金具の下や2階内部の教場出入口の唐戸の戸締金具の下に当初の塗膜が残されていた(写真6-1、6-2)。これらの金具は移築時に取り外されず、付いたままであったことから塗膜が残ったものと考えられる。当初材については、他の部分においても最下層に同一色の塗膜が確認されたが、後世の取替材には認められなかった。暗灰色の塗膜は、建具、内外部の幅木や廻縁、ベランダ柱などからも確認され、建築当初は全て暗灰色に塗られていたことがわかったため復原を行った(写真6-3、7)。当初の塗膜について、油性塗料であったか確認するために塗膜の分析も行った。塗膜の採取写真6-1 旧睦沢学校校舎1階外部正面右端唐戸(部分)写真6-2  旧睦沢学校校舎1階外部正面右端唐戸(部分)写真6-3  旧睦沢学校校舎1階外部正面右端唐戸(部分)写真5 旧睦沢学校校舎古写真(大正10年)