近代建築に使用されている油性塗料

近代建築に使用されている油性塗料 page 32/74

電子ブックを開く

このページは 近代建築に使用されている油性塗料 の電子ブックに掲載されている32ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
近代建築に使用されている油性塗料

30いたことを傍証する建物であるため、その当初の塗膜が現存するかが注目される。しかし、保存修理時の調査の際、白ペンキ層は確認されず、最下層に残っていたのは粒子の粗い赤褐色の塗料であり、下地であろうと判断された。現在の塗装色は、明治17年(1884)の頃の姿を再現したものである。近代の最初期に登場する洋風建築の中には、擬洋風建築と呼ばれる建物がある。これは従来の日本の伝統技術を用いながら、洋風の建物を模倣したものである。明治2年(1869)に建築された旧新潟税関庁舎は、初期の事例として現在に残るものである(写真3)。中央の塔屋やアーチが特徴で、建具は下見板鎧戸付ガラス窓となっている。洋風意匠を採用しながらも、建具や垂木の塗装には油性塗料ではなくベンガラを用いており、外壁はなまこ壁に仕上げるなど、伝統技法が多く用いられている。旧新潟税関庁舎は、重要文化財指定後の保存修理により、建築当初の姿に復原された。山梨県の旧睦むつ沢ざわ学校校舎は、明治8年(1875)に山梨県巨摩郡睦沢村(現甲斐市)に建築された学校建築である(写真4)。当時、山梨県令であった藤ふじ村むら紫し 朗ろうが近代化施策に熱心であったため、甲府市界隈にはいち早く擬洋風建築が建ち並んでいた。小学校建築においても同様で、図1 ふるさと文化財の森設定地(平成24年2月1日現在)