近代建築に使用されている油性塗料

近代建築に使用されている油性塗料 page 3/74

電子ブックを開く

このページは 近代建築に使用されている油性塗料 の電子ブックに掲載されている3ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
近代建築に使用されている油性塗料

はじめに  1はじめに東京研究所保存修復科学センター近代文化遺産研究室では、多岐・多様にわたる近代文化遺産の保存と修復に関する研究会を、平成10(1998)年度から毎年、継続して開催してまいりました。これまでの研究会では、科学技術の進歩を代表する乗り物 ─ 船舶、鉄道、航空機 ─ や、近代産業を支えた鉄骨及びコンクリート造などの大型構造物と機械に、着目してきました。さらに、平成22(2010)年度の研究会では、私たちの日常生活において非常に身近でありながらも、20?30年前までは比較的その価値を見過ごされがちだったレコード・フィルム等の音声・映像記録メディアの保存と修復に焦点をあてました。この研究会では、以前から近代文化遺産に携わられている方々はもとより、出版社、図書館等で資料保存に関わられている方々にもお集りいただき、異なる分野の専門家同士の新たな交流のきっかけを生み出すなど、大きな反響をいただきました。平成23(2011)年度2月の研究会は、「近代建築に使用されている油性塗料に関して」と題し開催いたしました。ここでは、建造物そのものではなく、その構成要素の一つとなる油性塗料における、日本国内での歴史、使用実績、保存と修復の現状について、科学的考察を含む多角的な視点からの研究発表が行われました。歴史的建造物の保存・修復において、塗装はその対象物の本来あるべき姿を再現するために重要な役割を果たします。これまでにも、塗装修理において、施工当時と同等の素材と仕様を採用することが適しているのか、また、現在でも使用可能であるのか、といった問題提起とその対応について意見交換が行われてきました。本研究会では、特に国内の大手塗料製造会社が軒並み油性塗料の生産を中止し、入手が困難となった現状のもと、油性塗料を塗布した近代の建造物について、どのような対策を講ずることで、保存と修復を図ることができるのか、また、代替塗料の使用実例の報告を通し、現状と課題について情報を共有することができました。今後も、近代建造物の保存と修復において、塗装材料に関して専門分野を越えて学際的な調査研究が幅広く進められるよう願っております。ここに出版する報告書は、この研究会における発表をもとに、講演者のみなさまにご執筆いただいた原稿を編集したものです。本書の作成及び研究会を実施するにあたり、多大なるご協力、ご高配を賜りました関係の方々に心からの謝意を表します。平成25年3月29日独立行政法人国立文化財機構 東京文化財研究所所長 亀井 伸雄