近代建築に使用されている油性塗料

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近代建築に使用されている油性塗料

博物館明治村の建物群の修復に使用した油性塗料に関して─展示建造物にみる塗装復原の現状と課題─  25は、移築時に古色塗りを施して以降、塗装を行っていない。よって移築時に塗布した古色塗によって顔料が保護され、ある時期から雨だれによって露出したと推察されたが、塗布された当時の色調は、下見板の炭化や汚損により不明であった。このような調査結果から、下見板の杢目をみせる浸透性の展色材として柿渋、顔料に弁柄を選択し、修理工事以前に近い色に調色して塗布した後、荏油で保護することとした(写真28?30)。一方、塗膜調査だけでは復原が困難な場合もある。東京駅巡査派出所では、上げ下げ窓、窓枠等の窓周りや室内のカウンターに旧塗膜の層が確認された(写真31、32)。塗膜のひび割れから油性調合塗料と判断され、古い塗膜である可能性があったが、塗膜は3?4層と少なく、90年以上風雨に晒された部分としては塗膜層が少ない。本建物は、東京駅丸の内本屋と共通した意匠で構成されたと考えられるため、古い塗膜は重要であるが、必ずしも最下層の塗膜が創建時やそれに近い時期であると判断することはできない。塗装の復原には、塗膜調査や成分分析と並行して、創建時の塗料に関する史料調査・研究など既存塗膜に頼らないアプローチも必要である。以上、展示建造物で使用した油性調合塗料と近年の保存修理工事の過程で発見した塗膜、塗装の復原、さらに維持・保全の過程における課題について述べた。明治建築において塗膜は、建物の特徴の一要素であり、特に木目塗は、建物の歴史的価値の一部として評価される。現在、国産の油性調合塗料は、生産を確保しなければ入手困難であるが、乾燥の遅さを生かした塗装表現である木目塗のように、明治建築の保存修理工事には油性調合塗料が不可欠な場合もあるだろう。また材料の確保に加えて、上記し写真30 平成23年の保存修理後外観