近代建築に使用されている油性塗料

近代建築に使用されている油性塗料 page 25/74

電子ブックを開く

このページは 近代建築に使用されている油性塗料 の電子ブックに掲載されている25ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
近代建築に使用されている油性塗料

博物館明治村の建物群の修復に使用した油性塗料に関して─展示建造物にみる塗装復原の現状と課題─  23維持しなければならない。ところで明治村は、開村後47年目を迎えており、屋根替えや半解体工事などの保存修理工事を順次実施する時期にある。保存修理工事においては、移築時に施した塗装の一部を剥離剤などで除去し、過去の塗膜を調査して仕上げや色調の復原に努めている。そこで近年、保存修理工事において塗装を復原した事例について紹介したい。平成21?22年(2009?2010)に保存修理工事を実施した北里研究所本館・医学館では、塗膜調査によって室内の建具枠から塗膜の層が発見された(写真20、21)。そこで最下層の塗膜にみる色調を復原することとし、これを基準として関連する他の部分の色を選択した。この際、耐久性を考慮してターペン可溶一液反応硬化性ウレタン樹脂塗料を用い、本建物の特徴であるツートンカラーを復原している。また本建物は、正面入口に向かって幅の広い階段がある。この階段及び手摺は茶色のペンキで塗られていたが、ペンキは後補であることが明らかであった(写真22)。羽目板や段板、段裏板の状況からみて杢目3)を活かしたワニス系塗料が施されていたと考えられることから、既存塗膜をジクロロメタン系の剥離剤にて除去し、コーパルワニスの2回塗りを施して杢目をみせる仕上げに復原した(写真23)。このように、ペンキ塗装の下から異なる仕上げが発見される例は、他の建物にもある。西郷從道邸では、平成5年(1993)に保存修理工事を実施した際、暖炉の塗膜下に黒漆が発見された。そこで当初の修理計画を変更して黒漆を復原している(写真24)。平成23(2011)年度に保存修理工事を実施した学習院長官舎では、赤褐色の鉱物らしき付着物が軒下や窓枠周り等数箇所の外壁下見板の表面に確認された(写真25?27)。この付着物は層を有さず、木目の凹凸部分に付着している状況にあった。そこで東京文化財研究所の協力を得て、付着物の成分及び色調の分析を実施したところ、その鉱物は鉄(Fe)を主成分とする赤色系顔料であることが判明した。本建物写真22  玄関正面の大階段(平成21?22年の修理前)写真23 修理後写真24 黒漆を復原した暖炉