近代建築に使用されている油性塗料

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近代建築に使用されている油性塗料

105.終わりに 今回のそれぞれの分析結果(スペクトル)から、油性の物質が劣化(酸化)して生じたと思われる吸収を認められたものもあるが、きちんとした判断を下せるまでにいたるものではなかった。これにはいくつか理由があるが、今回解析の結果いくつか解ったことがある。それは、赤外分光分析法(IR)を用いた分析だけでは判断しきれないということ、また、油性の物質が劣化(酸化)する過程が一つだけとは限らず様々な過程を経て劣化(酸化)するために、比較対照するデータが決定的に足りないということである。今回、比較対照可能だと思われる、油の劣化後の分析結果はドイツの技術者から入手したものであり、それだけを頼りに判断するのはあまりに判断材料が少なすぎた。さらに言えば、今回話題にしている油性塗料に関して、前述のように合成樹脂が混合されているものが多く、結果として、油が劣化した痕跡が分析で見つけられたとしても、それがオリジナルの油性塗料であるかどうかはそれだけでは判断がつけられない。このような状況の中で、建物に使用されている塗料を油性塗料かどうかという判断を下すのは非常に困難であると思われる。今後は、油の劣化の調査を行い、それらの試料について赤外分光分析だけでなくガスクロマトグラフ質量分析(GC-MS)まで行った分析結果を蓄積し比較対照しうるものを収集し、それぞれの試料と比較する必要がある。写真10 旧睦沢学校校舎扉の剥離片写真9 日本赤十字社中央病院病棟・鎧戸の剥離片写真7 旧三重県庁舎扉の剥離片写真8 日本赤十字社中央病院病棟・欄間の剥離片